下関で多様性を叫んだげかい(下) Surgeons want to both improve surgical skills and have good family relationships.

投稿者: | 2024年8月12日

13名の外科医に、外科の仕事の多様性に関する意識調査を行い、第79回日本消化器学会総会で発表してきました。何故その調査を行うにいたったかは、前回の内容を参考にしてください。

① まず、どういう外科医になりたいのか?

最も多いのは高い技術を持った外科医、すなわちゴッドハンド そして同数で家庭との両立でした。副業や趣味との両立・学問の道を極めたいという方はほぼいない。

② 多様な仕事を行う(要求される)ことについてどう思うか?

3分の2が、気にしない。外科ってそういうものでしょ。とのコメントでした。ただし、「あくまで忙しすぎない範囲で」。

3分の一ほどが煩わしく、できれば専門分野に集中したいとのことでした。

③ 仕事がバラバラだと業務量も差が出来がち。どう思う?

多くは、仕事量の差は「給料」に反映して欲しい。次に「管理職」の介入で仕事量の是正をして欲しい。

忙しさに差がありすぎるのは、忙しい側からは嬉しいことではないというのが大半の意見でした。

全員で同じビジョンを持つことが不公平感の解消につながる、という意見がありました。

対象が少数のためあえて詳細な人数は記載せず、もやっとした表記にとどめます。ご了承ください。

アンケートにご協力いただいた皆様には、匿名でのデータ公表にご了承いただきました。ありがとうございました。

個人的には、文末の抄録で記載した 仕事の内容の透明化が不公平感の解消につながるのではと思っています。会場では共感していただけ、嬉しく思いました。

私の理解として、

外科医の仕事が多様であることは当然と認識しているが、そのために忙殺されるのは望んでいない。

手術の技術向上と家庭との両立を目指している。

という高い志を持っていることが証明されました。

以下に抄録を転載いたします。ありがとうございました。

ロールモデルは地位・業務内容・研究・プライベートの組み合わせ:客観的評価基準の必要性

なりたい外科医像は人それぞれであるが、大きくは

①社会的地位(主に職場内の立場)②仕事の内容・責任度 ③学術的研究 ④プライベート

の、配分並びに掛け算と考えている。各医師が各々自分の希望で目指す配分を決めて働いていければよいが、これまでは④プライベートを如何に削るかが①②に直結していた。

しかし日本全体、特に外科において顕著な少子高齢化は外科医の減少・高齢化を招き、外科では広く多様な人材を集め、長く肉体的・精神的に健康に働いていける環境にしなければ人手が全く足りない状況へ陥っている。自身および家族の健康は長く働き続けるための重要な条件であり、結果として④プライベートを重要視せざるを得なくなった。その一方、これまでのプライベートを犠牲とした貢献度にもとづく評価が難しくなったことが、近年の混乱の一因と考える。

今後は別の評価基準を確立し、それに基づき①②の評価を行なっていくことが望ましい。公平感を維持するためには、客観的指標としてすでに確立している①学会専門医制度②研究発表量が有効であり、これらに基づき人間関係・感情によらない人事評価を行なっていくことが解決策となりうる。

また、外科においては人材の多様化・高齢化に伴い業務内容も多様化しており、手術だけでの業績評価が難しくなっている。これまで、自身の業績を喧伝するのは日本の謙虚を美徳とする文化的背景から好まれなかったが、今後職場内のさまざまな業務(外来診療数、化学療法治療数、論文数、学会発表数、入院患者数、紹介数、検査オーダー数、患者満足度調査結果など)を幅広く職場内で公表し周知することで、手術だけによらない組織貢献度を共有しうる。自己肯定感を伸ばせ、職場を蝕みうる不公平感を減らすことが期待できる。

もちろん、それぞれの医師が主体性を持って自分のなりたい外科医を目指し希望を主張しつつ、自分勝手でなく他者の希望を鑑み組織として機能していくチームの一員となる、独立意識・チーム意識が求められるだろう。

当院の取り組みを実際の事例、また外科医へのアンケート調査をもとに発表する。さまざまな情報が共有されることで、社会変革が加速することを望みたい。

(©️日本消化器外科学会 2024, 学会事務局の許諾を得て転載。)

おまけ

最後にちょっとだけ毒を書きます。

学会では企業ブースがほとんどを占めるホールの片隅に、デジタルポスターのブース(狭い!)20ヶ所ほどが集められ、片隅に追いやられてる感がすごかった。消化器外科学会は日本最高峰の消化器外科系学会。会場には日本の叡智(私は知りませんが)が集まっているのですから、もう少し広々と発表させて欲しい。

企業ブースも大事ですが、学会が育てるべき、日本の宝は人材です。ぜひ学会関係者の方、外科医たちをチヤホヤしてこれからのモチベーションが上がるように、いい気持ちにさせてあげてください。

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