外科医の子育てで問題点として挙げた「業務に属人的内容が多い」の各論です。
それぞれの患者さんの状況を把握をするのはとても大変で、完全に理解できているのはおそらく主治医だけでしょう。むしろ理解するのが主治医の仕事といえます。
また、医療は専門的内容が多く医師ごとで得意分野が異なり、同じ科でも全く同じ医師というのはいないでしょう。よって、あの先生に聞かないとわからない、もしくはあの先生でないとこれができない、ということが非常に多いです。結果として、他の医師では判断できないことが増えて、呼び出しや確認が増えやすい性質を持っています。
折角のチーム医療・当直・休日当番医体制をしいていても、病棟から主治医に直接電話かかってきます。 土日に公園で子供を遊ばせていても、頻回な電話に対応せざるを得ない。子供は寂しそうで「パパは僕をほったらかして電話ばかり」・・・できれば少ない方がいいなと思います。
この対策はとても難しいのですが
①自分のスペシャリティを限定させる。
②職場でこだわりが強すぎると思われないようにする。
といった地道な普段からの対策が重要になります。
1。自分のスペシャリティを 限定させる
まずお勧めしたいのは、自分にしかできないことってなんだろうということを考えてみることです。自分にしか出せない部分、他の人では難しいだろうというものは必ず皆さんあると思います。そしてその多くは、言語化しにくい。人格でしたり、技術でのちょっとしたコツなんだと思います。
自分の中で腑に落ちるものが見つかれば、それ以外の分を思い切って捨ててみると良いかと思います。例えば、できる限りクリニカルパスを利用する。内容も自分流にアレンジしない。大体のことはパスの中に書いてありますので、確認が減っていきます。こだわりは大事ですが、医学的にどちらでもいいことをあえて個人としてこだわっているのではないか?考えてみます。 全ての先生が同じ指示を出すのであれば、あえて個人に確認しなくても良いということになるでしょう。
例えば、点滴で自分の中のスペシャルがあるとしても、パスの中の点滴の内容とそんなに大きく違わなければ、できるだけパスをそのまま使用しておいた方が自分の負担も減るし、確認されることも減るでしょう。
2。 職場でこだわりが強すぎると思われないようにする。
これはとても時間かかりますが、あの人はこだわりが強くて勝手にすると怒られると思われることを、できるだけ減らしていきます。
そうすると、当直医に聞けば良い・休日回診医に聞けば良い、といったことが増えていきます。後で、勝手に指示出された!とか、俺は聞いてない!とか言ってしまうと、では今度から全部主治医に聞こうとなってしまいます。むしろ、休日だから申し訳ないなと気を遣ってくれての善意からです。逆恨みするようなことを言ってしまうと、一気に関係性が悪化してしまう可能性が高いです。
どちらでも良い事はまぁそれでいいかと割り切って、自分のスペシャリティはそこで出すものではないと考えるのはどうでしょうか。
あの先生が手術した方が立ち上がりがいいとか、何かしらこじれた状況に陥った時にあの先生が来ると丸く収まるとか、そういったことで自分の特別さを発揮できたらいいんじゃないかなと思います。
自分への確認事項を減らすことで負担を減らすというのは、専門職である医師の職分を失う危険との駆け引きだと思います。 難しい点ではあるのですが 、自分のスペシャリティを限定させて、どちらでも良い事はこだわらない。治療内容も一般的なガイドラインに準拠した方法で行うことで、誰からも理解できるようにする。パスを極力使用して、属人的な内容が入りにくくするよう努める。
自分のスペシャルな部分はここじゃないんだ、と割り切ると良いかと思います。
働く時間が限られた仕事であればこだわりを出しまくっても良いかと思います。しかし医療では24時間患者さんの状態は変化していきます。24時間自分だけでコントロールするのは不可能です。どうしても他の方に頼り、チームとして対応しないと成立しないものです。ですので、「あの人じゃないと」と言われることににこだわらないことが大事だと思っています。
こだわるのも大事だけど、ほどほどに。恋愛小説風に言えば、「あなたが特別なのは何かをしてくれるからじゃないの」といったことでしょうか。
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