ボランティアはやってみないと分からない:医療ボランティア in ペルー① Voluntario Medico en Cuzco de Perú

投稿者: | 07/28/2025

公衆衛生を学んでいると、よく出てくるのが国ごとの医療制度の比較です。その際によく使用されるのが、高所得国(High income country), 中所得国(Middle income country), 低所得国(Low income country)という分類。

国家の経済状況と、システムや平均寿命などの関連性を検証し規則性を見出そうとします。

なんとなく分かった気で勉強していましたが、考えてみると日本とアメリカという高所得国以外で暮らしたことがない。たくさん旅はしましたが、体が頑丈で日本以外で病院にかかったことがない。

これはいかんと思いました。いわゆる頭でっかちではないか?と。

聞いた知識だけでさも分かったようなこと言うのも嫌だし、実際に医療制度を肌で感じてみないと。何か手はないか?いろいろ調べてみると、インターンや医療ボランティアという方法があります。これなら医療組織の中で、その国の制度を肌で体験できる。

どうせなら日本からは行きにくいところと思い、南米で検索しました。Maximo NIvelという会社が医療ボランティアを募集しています。ただ、自分である程度の手出しが必要・・・一瞬迷いましたが、ホテル代と食費と思えば安いものかな?

ペルーはWorld Bankによりますと、上位中所得国(Upper-middle-income ecnomy)。そんなに違わないのでは?と思いつつも、家族から「とりあえずやっちゃいな!」との激励。申し込みました。

対応はとても迅速。プログラムのもと、滞在できるのはペルーのクスコという街です。現在の私のスペイン語の実力だと、参加できるのはインターンでなくボランティア。活動は制限されますが、勉強しにいくのでどっちでもいいや。

なお、犯罪歴がないかの証明書が必要でしたが、結構な金額・・・知り合いの紹介状でも可とありましたので、2人に頼み「この人 怪しい人じゃありません」とサインしてもらい(ありがとう!)、忙しく下調べゼロで出発しました。

さて、ペルーの首都リマで乗り継ぎクスコに早朝到着。なんだか頭が痛い。それにだるい。

移動疲れがひどいなぁと思ってましたが、なんだか息苦しく頻呼吸。あれ?調べてみると、クスコは標高3400mでした。そんな高いところ、日本では富士山以外ありません。高山病でした。

とにかく水をがぶ飲みし3日後に頭痛は消えましたが、ちょっと坂道を登るだけでゼイゼイいいます。そんなところにサッカースタジアムまであります。人間ってすごい。

さて、到着翌日に早速ボランティア開始。この時点で私の中には「なんで来ちゃったんだろう・・・」という後悔が渦巻いています。スペイン語も初級ですし、自分に何ができるんだろう。

ああ、しまった、南の島にバケーションに行けばよかった。先月の俺のバカ。(こういう後悔は何かに挑戦する時いつもです。)

さて、バスにゆられ診療所に到着。診療所はMedical C.S. Dignidad Nacional。(同じところでボランティアされた方の経験談がありました↓)

私の耳学問による理解として、ペルーは医療組織が4段階に分類されていて Class 2の施設です。いわゆるクリニック、簡単な採血検査などはできます。なお、手術などできる病院はClass 4になり、基本的にクリニックから紹介されない限りそれらの病院での専門的治療は受けれないそうです。

外来の先生にご紹介いただき、診察室においていただきました。

しかし、ここで2つの点に驚きました。

  1. 診察がとても丁寧。

診察は平均一人20分です。とても丁寧に挨拶し、握手し、世間話し、冗談が飛び交います。パソコンはありませんので手書き、もちろん詳しい検査はできませんので身体診察のオンパレードです。

私は何ができるわけでもなくほぼ座っていただけですが、時々外科医ということにリスペクトを示していただき、身体所見をとらせてもらいます。患者さんも、「日本人?よくきてくれたわねー。」と毎回丁寧に挨拶いただき、握手します。世間話もします。うーん、とても幸せな空気が流れています。

診察に30分以上かかることもザラ。しかし山積みのカルテに特に焦ることもなく、待たされて外からイラつく声も聞こえず、ゆったりと時間が過ぎていきます。

 2. ボランティアだと別の視点になれる。

海外旅行をしていて思っていたのですが、観光客として地元の方に接するのはホテルやレストラン、ショップ。つまりこちらは立場としてお客さんな訳です。勧誘の人に声をかけられたりもしますが、どこか距離があります。道ゆく人も「あ、観光客」という目で通り過ぎていきます。

ひたすら観光地を周り写真を撮り、お買い物して、これで本当にその国を理解したことになってるんだろうかと思ってました。

さて、診察室に座っていると、私は「なんか日本からやってきた医者らしい。」と見られます。よく分からんし、特に役に立つ人でもない。そうすると、皆さんきわめて自然な発言・態度・表情を示してくれます。

話してることや親子の会話、暇な時にスマホでおしゃれな動画をみつめるお姉さん、診察室を動き回りあちこちつつく子供。コレステロールの高さを指摘されバツ悪そうにされる姿など。もちろんスタッフの仕事している姿は、日本と一緒です。

「なんだ、人間どこも一緒じゃない。」ということを理解できました。これは正直とても感動しました。

唯一違う点は、子供でも大人でも挨拶すると堂々と手を差し出されて、握手することでしょうか。

あれ? パソコンはありませんし、検査データも手書きですが、私が医者になりたての頃は日本もどこもそうでした。別に特に診察に違いはありません。むしろそのゆったりした時間、医師と患者の距離感は羨ましいくらいです。

ここに俺がボランティアとして貢献できることって別にない気がする・・・。システムとして十分成立しているのです。

この思いは2週目に入って少し変わっていくのですが、長くなりましたので次にて。