多くの医師は常勤・非常勤を渡り歩きながら生活しています。単発のアルバイトを空いた時間に行う医師も多いです。
常勤は就業形態、正社員は雇用形態ですが、おおむねこの2つは一致しています。一般的な仕事では正規(常勤)・非正規(非常勤)の壁というのは大きく、苦労を経て非常勤から常勤へ移ったりしますが、医師は割と気楽に常勤と非常勤を行ったり来たりします。
医師の就業形態は、求人情報サイトでは大雑把に以下の3つに分けられています。
1、常勤(週32時間以上勤務)
2、非常勤(それ以下)
3、スポット(単発)
常勤の32時間勤務は厚生労働医政局が規定していますが、すなわち週4日勤務すれば常勤です。
さまざまな就業形態の壁が低いのは、やはり医師が技術職・専門職だからではないかと思います。
特定の職場でないと通用しないような偏った知識でなく、基本的にどの病院に行っても通用する普遍的な知識・技術をベースとしているため、就業形態で業務内容を制限されにくい。空いた時間でのスポット、すなわち日雇いアルバイトが見つけやすく、かつその単価が特殊技術をベースにしているため比較的高いことが大きいでしょう。
しかし何でもメリット・デメリットはあり、医師のこの技術職・専門職であることはギルドに属する職人のようになりがちで、職場との関係性が低く職能集団内の立ち位置をより重視しがちです(特に外科系医師はチームとして機能することが求められますので、同じ業種内のポジションがとても重要になります)。職場との関係性の低さから他の職種との連帯が難しくなり、職場内で集団としての契約交渉が難しいです。個人での交渉もしくは医局やエージェントを介しての交渉をとらざるを得なくなります。
医師のこの技術職・専門職に近いものは・・・として僕に思い浮かぶのは、プロスポーツ選手や、最も近いものとして芸能人、特にお笑い芸人ではないかと思っています。
吉本興業に所属する芸人の雇用って医師に似てるなぁと思っていました。お互い技術職・専門職であり、職能集団としてギルドのような団体に所属し、そしてそのギルドから雇用されているわけでないけどギルド内での人間関係・上下関係に、強く仕事が影響を受けている点です。
それはともかく、子育てと就業形態は密接な関係があります。
産休は労働基準法に基づくすべての労働者(男性除く)の権利ですが、育休はすべての労働者の権利ではありません。医師は育休が適用できないケースが多く、よって子育ての時どうするか、自分たちで考えて何とかするしかないのが実情です。
なぜ育休が取りづらいかは、転勤が多いことが影響しています。育休は一般的には1年以上すでに雇用されており、今後の契約の見込みがあることなどが取得条件に挙げられていますが、特に医師の子育て世代では1−2年での転勤はザラです。また、大学院に通っている場合は、学生+非常勤勤務+スポット勤務で生計を立てています。法律上の育休取得の条件に適合しないケースの方が、圧倒的に多いのではないかと思います。
雇用先である病院は、職員というより派遣されてきた医師と捉えがちで仲間意識が低く、出産や子育てに関して休まざるを得ないことも単純に労働力の損失として考えがちです。温かい目で見てくれる職場の方が少ないでしょう。
年度替わりである4月以外の異動は難しく、そうなると出産育児関係で生まれた勤務期間の隙間は、非常勤・スポットで乗り切るしかありません。
いきなりハードボイルドですが、
「俺たちは専門職。自分たちで考えてうまく立ち回って乗り切っていくしかない。」
と覚悟を決めるしかありません。
となると、医師で子育てをがんばりたい、時間を確保したいとなったら自分なりにメリットデメリットを考え計画的に行うしかないかなと思います。
次回は子育て中の非常勤の大変な点と、その乗り切り方を書いてみたいと思います。