外科医の子育てで立ちふさがる3つの壁 Obstacles against daddy-surgeon.

投稿者: | 2023年9月27日

僕は仕事で外科医をしていますが、子育てするにはなかなか辛い仕事と思います。 もちろんもっと大変な仕事も多いとは思いますが。

外科医といいますと朝から晩まで病院にいて、何かあると飛んで行き緊急手術。仕事第一主義で生きているというイメージではないでしょうか。

例えばドラマの中で外科医は「ちょっと行ってくる」と家族につぶやいて、カッコよく出発するわけです。僕も かっこいい!と思っていたこともあります。

しかし、いざ外科医になって家族が出来て、こういう呼び出しが年1回ならともかく日常的になると、なかなかハードです。

とはいえ家族がいて、かつ共働きとなると、どうにかしないといけないわけです。

実際、子育てをすると、外科医の以下に述べる点がすごく子育てと相性悪いなぁと感じます。

1。 時間外の緊急の呼び出し。

やはり外科というと緊急手術がつきまといます。そして、その手術はいつやってくるか分かりません。

具合が悪くなった患者さんが運ばれてきて、手術が必要だと判断された場合には、とにかく人員がいるので呼び出されます。 ではその時に子供はどうしたらいいのか。

中学生高校生ぐらいだったら寝せておけば良いかもしれませんが、小学校低学年やそれより小さいとなると、家に1人で置いていくというのはなかなか厳しい。

この時頼りになるのは他の家族です。

もちろん、私の家族はいつも全力で快く送り出してくれます。しかし、こういった業務が日常的に行われていると、だんだん家族も疲れが溜まっていきます。

休日家族で出かけていても、僕はいつ呼び出されてそこから消えるか分からない。 楽しい家族旅行も、突然キャンセルになってしまう危険を常に秘めています。

2。 手術は途中でやめれない。

当たり前ですが、手術は途中で止めることができません。翌日に続きをするわけにもいきません。

絶対に完遂する必要があります。

そして手術が終わった後も、患者さんの状態の確認、切除した組織の病理提出(これは組織のダメージを防ぐためその日にする必要があります)など、膨大な仕事があります。

手術の予定時間はあるにはあるのですが、実際その通りに終わらないことが多い。 保育園のお迎えまでに終わらない時は、電話をして延長をお願いする必要がある。

しかし預けれる限界の時間を過ぎてしまう場合、どうしたらいいのか。そして、そもそも手術中に保育園に電話をする余裕はないです。

3。 人に頼みにくい属人的内容が多い。

患者さんの病態というのはとても複雑です。

当たり前ですが、同じ人間というのは1人もいません。それぞれで、病気の内容、他の併存する病気、治療経過、家族背景、アレルギー、心理的要因、全て違います。

それを自分が担当する患者さんだけならともかく、病院の他の患者さんでも理解するのは不可能です。

主治医というのは主に手術を担当する者のことですが、同時に患者さんのことを理解し方針を決めるのがメインの仕事です。

となると入院している患者さん、もしくは担当している患者さんが夜間病院に来院された場合、その方を一番理解しているのは、主治医になるわけです。

最善を尽くすなら、基本的に主治医に全部確認するのがその患者さんにとっては1番良い。 しかし、そうなると24時間いつでも電話がかかってくる状況になるわけです。他のドクターで判断が難しい状況が発生しやすく、それが呼び出しや居残りに繋がっていきます。

まだまだあるとは思いますが、個人的にはこういった内容が子育てには相性が悪いなぁと感じています。

独身時代はこういった仕事をしていることにとても誇りを持ち、生活を削ってがんばっていました。しかし結婚し家族を持って、そしてそれからも同じように働き続けることが要求されるわけです。

これから、人生100年時代。ずっと働き続けていくことが予想されます。という事は外科医の仕事も、60歳を過ぎ70歳、それこそ80歳まで継続していくものになっていくでしょう。

となると、日常業務として 毎回付け焼き刃な対応をするのではなく、これらの可能性が最初から組み込まれ予想されたシステムとして対応していく必要があると考えています。

例えば予想外・緊急の仕事と言えば消防士さんです。火事のたびに消防士さん達が自宅から緊急で呼び出されてたら、被害は増大しますし消防士さん達も疲弊しきると思います。

私の家族にはいつも全力でサポートしてもらい、ありがたいと思っています。

そして同時に、そういう家族のサポートのもとでしか成り立たない状況に、現在の医療界は依存しているとも感じます。

システムがゆっくり変わっていくのを 待つでもいいかもしれませんが、変わった頃には私の子育ては終わっています。

次回は、これらの事項に対処するための個人的な努力を書いてみたいと思います。