子育て中はどうしても勤務できる時間ないし期間が不安定になりますので、非常勤やスポット勤務の活用が重要です。
非常勤のメリットは以下2つです。
1。勤務終了時間が比較的はっきりしている
2。勤務時間外の呼び出しがない
外科医の子育ての大きな壁としてあげた3つのうち、2つが解決します。
ただ専門職だけに、時間外の問い合わせ、専門性の高い手術の手伝いの依頼、手術が終わらない際の手術時間の延長はあり得ます。しかし、それらは仕事の性質上やむを得ないと思いますし、常勤時ほど多くはないですので十分対応可能でしょう。
子育てに集中できる状況が作れます。
では、一方デメリットは?
個人差がありますし感覚・感情的な面が大きいので、一般的な議論は難しいです。以下は、あくまで個人的な意見と思ってください。
1。金銭的不安定性。
当然ですが、収入は常勤医師に比べて減少します。 (もちろん週5日間非常勤で働けば別ですが。 )
手続き的にも、社会保障費(健康保険や年金)及び税金等、全て自分で対応する必要があります。特に4月から6月ぐらいまでは年金及び税金の膨大な請求が届き、 勤務体系の変化への戸惑いと重なって暗鬱とします。
収入の減少に対しては、支出の切り詰め、固定費の見直し等の基本的な対策が重要です。
収入を増やすことも解決策ですので、私は非常勤にそのまま当直を組み合わせていました。収入を増やせ、新たに当直するのに比べ通勤時間を節約できます。ただし、仕事を増やすのは解決策ではありますが、結局それは子育ての時間を減らしてしまいます。どこで折り合いをつけるかが重要でしょう。
また、実際に必要な金額そして支出を計算してみるのも大事です。計算してみると、思ったより大丈夫なことが多いです。漠然とした不安感に駆られ非常勤の時間をいたずらに増やし続けると、結果として子育てが減って本末転倒となり、自分の体力・精神力も消耗していきます。
2。 キャリアへの不安。
非常勤である以上、責任ある仕事は回ってきにくいです。
それは当然だと思います。仕事を頼む側も、24時間変化する患者さんのことを24時間考えてくれる常勤医師を優先します。正直これは割り切るしかないかと思います。
同時に、普段の努力として勤務で必死に働く努力を見せるのも大事でしょう。積極的に手術に入れてくださいと、職場の方とコミュニケーションをとりアピールしていくことも大事だと思います。 言われたことをただやるのではなく、自分からキャリアを少しでも伸ばそうとする貪欲さが大事になってきます。
この時感じる、キャリア形成から外れてしまったような疎外感はとてもきつい。自分がそれまでいた世界から、壁を間に作られてしまったような感覚になります。
出産後の医師と話すと、妊娠を機に自分と一緒と思っていた周りの間に突然見えない壁が出現してしまったと表現していました。 いわゆるガラスの天井でしょう。
3。 社会的疎外感。
これは僕が男性だからより強く感じたかもしれませんが、社会において自分の存在意義を失った感覚になりました。
それまで医師として朝から晩まで働き、自分の居場所というのが明確に存在し、同じようなモデルが周囲にたくさん存在しました。
しかし非常勤で子育てし平日に公園に行くと、まず男性に会う事はありません。そして自分が 医師でなく、「子供を連れた平日に公園にいる何をしているか分からないおじさん」として、社会から見られている(ように感じる)ことに戸惑いを抱きました。 同じような人に会うことは極めて少ない。この疎外感も大きい。
家に閉じこもっていてもよかったかもしれませんが、最終的に私はこれをチャンスと捉えました。PTAに参加したり、地域の清掃活動に参加したり、今しかできないことがあるのではないかと思い自治体の広報誌を確認してイベントを探しました。
結果として新たな友人ができ、地域のコミュニティーの中に新たな居場所を作ることで、心の安心が生まれたように思います。
思った以上の分量になりましたので、対策の各論は別に作りたいと思います。
ピンバック: 病院での医師の立ち位置はハードボイルド Hard-boiled position of medical doctors. – 外科医は子育てと研究の夢を見るか Does Daddy-Surgeon Dream of Research?
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