今回は各論です。外科医の子育てにおいて最大の課題である時間外の呼び出しに、いきなり切り込んでみます。
1。 配偶者にお願いする。
真っ先に行う方法で、配偶者に頼みます。 「呼び出されたから行ってくる、子供を頼む」と言うわけで、イメージしやすいと思います。 家族というチームにおいて、役割分担として行いやすい方法ですが、多用すると徐々に フェア感が薄れていく危険な方法でもあります。往々にしてお願いする側はすぐ忘れますが、頼まれた側は1.5倍増しで覚えているものなので、この感覚のズレが致命的なトラブルを発生させやすいです。
しかし、夜中の3時に熱が出ている子供の世話をしてくれる人は配偶者以外存在しないと思います。 一番手短な方法でもあると同時に、最終手段でもあり、できるだけ使用を控えることをおすすめします。
2。子供だけで自宅で待ってもらう。
ある程度大きい子供、例えば病気の中学生に枕元に飲み物や食べ物を置いて仕事に行くのはありでしょう。夜勤や当直で配偶者が不在といった時に自分が呼び出されたという状況も結構ありえると思います。
まだ試してはいないんですが、寝ている子供の枕元にデジタルデバイスでLINEなどをつなぎっぱなしにし、連絡を取れるようにしておく方法もあるかと思います。
3。 公的・民間サービスを利用する。
保育園が空いてる時間なら電話してみて、短時間でも預かってもらえないか頼んでみるのも良いでしょう。土日祝日の昼間だとやってみる価値はあるかと思いますが、人員の関係で断られても当然ではあります。
4。 親族にお願いする。
同居してる場合、家の近所の場合は可能かもしれません。ただ 突然預けられるのはかなり肉体的精神的に負担をかけるので、できるだけ避けたほうがいいと思います。
5。 病院の当直医や他の医師に対応の代行をお願いする。
呼び出しの内容によりますが、当直や病院にいる医師に対応をお願いする方法があります。 直接電話するか難しければスタッフ越しに連絡してもらい、僕はその後できるだけフォローアップの電話をするようにしています。また後日お会いした際に、必ずお礼を伝えます。以前お礼に手土産を買って行ったこともあります。
これは以前学会で指摘されたのですが、外科の先生はこだわりが強く内科の医師が代わりにするとかえって迷惑をかけないかが心配との意見あり。自分自身を省みて反省しました。信念は大事ですが、普段からあまりこだわりが強い気難しい人と思われているのは、こういう場合あまり良いことではないでしょう。
6。 病院に子供を連れて行く。
コロナ時代にはできませんでしたが、実際にはこの対応しか無理なことが多いと思います。例えば幼稚園児の家庭で配偶者が当直中で患者さんが急変した場合、夜中の三時に一人で置いていくわけにいきません。それこそ背負っていくしかないかと思います。 子供は感染のブースターになる可能性があり、また安全管理上危険な方法であると思います。しかし他に方法を僕は思いつきません。ぜひ、こういう方法があるよ、というのをお教えいただければと思います。
チーム制・主治医交代制での対応が進んできて、素晴らしい方法と思います。僕もそれが最終的な形態になれば良いと思っています。ただチーム制はある程度スタッフの人数がいないと機能しないので中規模以上の病院でないと難しく、現状では上記のような対応が中心になって行われているのではないかと思います。
この呼び出しは非常に頭が痛い問題で、外科医師と話すと多くがこの呼び出しの問題に対応するために、配偶者に残業のない仕事、もしくは専業主夫/婦に専念をお願いしているようです。
この状況をどうにかしないと、 家族の人生にまで影響を及ぼす制約の多い職場と映り、成り手不足につながりえます(すでになってますが)。
もしくは結婚市場で、外科医の配偶者にだけはなりたくないということにもなるでしょう。
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