シフト制は実はあまり弱点がない。 Shift systems may not have weaknesses.

投稿者: | 2024年2月19日

主治医制・複数主治医制とまとめてきましたので、今回はシフト制について。シフト制は時間帯ごとに区切って交代していくというスタイルで、病院だと看護職がシフト制です。医師ですと、救急部が積極的に活用している印象です。

まず、そのメリットデメリットをまとめてみましょう。

メリット

医師の勤務時間が限定されているため、集中して仕事に取り組める。勤務時間外の予定が立てやすい。

医師が勤務時間外に確認事項がないため電話がなく、ストレスが少ない。

デメリット

勤務につく度に、患者病状把握に時間を使う必要がある。

面倒なことを次のシフトに先送りしようとする危険がある(特に勤務終了間際)。

患者側は、誰が方針決定者かわからないため不安を感じやすい。

ちょっとマンネリ化してきましたが、今回も「医師」「患者さん」「管理者」「院内他業種」という視点からまとめ直してみます。

1。医師の立場から

利点: 勤務時間外で仕事のことを考えなくて良い。生活のペースを立てやすく、旅行などのプライベートの用事を入れやすい。医師間で事前の勤務時間の交代が可能になる。

欠点: 勤務開始時に担当する患者の病態把握に時間を要する。前のシフトが仕事を大量に残しているとその残務処理に追われる危険があり、書類仕事など誰が担当するかで押し付け合いが起こる危険がある。 その患者さんを治しているのは俺だ!という一貫した主人公的喜びを感じにくい。

2。患者さんの立場から

利点: 医師の精神力、体力、集中力が比較的常に安定している。 多数の医師が関わるため、治療方針が標準的なものになりやすい。

欠点: 長い目で見た治療が行われず、その場しのぎの対応しかされない可能性がある。 誰が担当者かわからず、たずねてもあやふやな返事しかされない危険がある。

3。経営者の立場から

利点: 複数の医師が関わるため、治療を標準化しやすい。医師の状態を常に一定のクオリティーに保てる。

欠点:医師と患者さんの結びつきが弱くなるため、ある特定の医師の強烈なファンといった顧客を確保しづらい。一人でも問題があると全体責任になる可能性があり、管理職が全体のクオリティー維持に気を配る必要がある。担当者が変わり続けることによる指示の混乱という新たなトラブルの可能性がある。

4。院内他業種の立場から

利点: 誰が担当者か時間によって明白である。電話をかけてもつながらないということがない。

欠点: 特にない。

まとめてみると、シフト制と言うのはすべての業種にとってメリットが大きいようです。特に院内の他業種からすればメリットは絶大。経営者のデメリットもそんなに大きくないようです。

あえて言うならば、医師が患者さんの治療という流れをまとめあげ治癒に導いていく、主体性のある仕事の喜びを感じにくい。患者さんも今ひとつ誰が主治医か分からず、人間的なつながりが弱いという点が欠点でしょうか。

自分でもまとめてみると、シフト制は意外に悪くないということは驚きでした。

各シフトで行うべき業務を明確にする必要はあるようです。 また、シフトの中でもある程度担当者を決めた方が全体の流れを理解でき書類仕事の担当が明確で、仕事の喜びも生まれやすいように思えます。

その分、管理職は仕事の分担が均一になるよう、各シフト内で行うべきことを放棄した「あれもこれも担当者に」という仕事の押し付けが起きないように目を配る必要があるでしょう。

外科の場合ですと、手術を担当するのはその日のシフトの先生というのは、流れ的にも感情的にも理解が得にくいと思います。外科での完全シフト制は難しいですが、主治医制(単独・複数問わず)とシフト制をうまく組み合わせることで負担が軽減できそうです。